起源は古代にさかのぼります。
狩猟でケガをした人が、そのケガによって別の痛みが消えたことから始まります。
その経験をなんども重ねながら、こんどは逆にそれを利用して、石などで体に傷をつけることで別の痛みを消すことを覚えました。
やがて石を研ぐ技術が発達すると、それ専用に石を研ぐようになりました。これが「へん石」と呼ばれ、鍼のルーツとされています。
へん石は今の中国で発見されたので、中国が鍼のルーツとする説もありますが、アイスマンが発見されたことにより、さらにさかのぼってヨーロッパを起源とする説や、イランやインドとする説もあり、真相はわかりません。
日本に鍼灸が伝来したのは六世紀。
以来、独自の発展をとげ、医学の本流となりました。わたしたちが生まれた時はたまたま西洋医学が主流ですが、歴史的にみると鍼灸の方が医療としてはるかに長い実績があります。
病気になったらはり、きゅう、生薬。それが当たり前でした。風邪をひいた、熱がでた、食べものにあたった、などから、血を吐いた、意識が昏倒した、など重篤な症状にいたるまで、すべてが鍼灸の対象でした。
江戸時代にはさらに発展し、天皇を治療するための方法まで考案され、いまもそれが広く用いられています。
やがて幕末に蘭学が伝来し、さらに明治政府によって西洋医学を医学とする法律が制定されると、鍼灸は衰退の一途をたどりました。
さらには、大東亜戦争の敗戦時、米国から鍼灸は野蛮な医療として廃止令が出されました。
しかしこれは先達の努力により、かろうじて廃止だけは免れたのです。
しかしながらその後は、いち民間療法の地位に甘んじることになりました。
以来、鍼灸といえば肩こりや腰痛、その程度の利用価値、という社会通念ができ上がってしまい、それ以外の病は、いやそれさえも病院へ、というふうに変わってきました。またこれにより、医療として施術できる鍼灸師の数を激減させました。
そして現在、ホリスティック医学の台頭、美容分野への進出により、鍼灸は再び見なおされてきています。