治療方針
現在はたまたま西洋医学が主流ですが、歴史的にみると鍼灸は、医療としてはるかに長い実績があります。病気になったら、はり・きゅう・生薬。かつてはそれが普通でした。
そんな医療としての鍼灸を受け継ぎ、慰安ではなく、医療としてのスタンスをとっています。鍼灸は万能ではありませんが、適応範囲は多岐にわたります。
鍼灸は、西洋医学に代表されるような対症療法ではありません。ここが痛い、そこが腫れた、どこの調子が悪い…それではその箇所を治療しましょう……ではありません。
ここにこんな症状が出たということは、どこに原因があるのか、陰陽のバランスはどうか、どの経絡に変調をきたしているか、それらを探っていくところから始まります。同じ症状でも原因はさまざまだからです。西洋医学は病気を見、東洋医学は人を見る、と言われる所以がここにあります。
鍼灸には、いま発症している症状を治療する標治法と、いま発症している症状の原因を治療する本治法の二つがあります。
局所だけ治療してその場は済んでも、その根本を治療しない限り、同じことの繰り返しになってしまいますので、当院ではどのメニューにおいてもその両方、太極療法に基づいて行います。
また、局所だけ治療されてよけいに体調が悪くなった話をよく耳にします。鍼灸では「気」を扱うため、施術する順序があり、さらに、組み合わせていい穴(ツボ)とそうでないものがあり、それらを把握した上で、治療がなされるべきと考えます。
鍼灸治療もまた、心身共にリラックスした状態で受けていただくことが大切と考えます。
となりで他人の声が聞こえたりすると、なかなか落ち着いて受けることができませんね。実際、そのような空間では気の乱れが起きやすく、好ましい環境とは言えません。ですので、プライベートサロンの形式をとり、落ち着いた空間で受けていただけるようにしています。
また鍼灸治療では、男性には女性の鍼灸師が、女性には男性の鍼灸師が適しています。鍼灸では、陰陽や五行にもとづき、治療がおこなわれます。とくに陰陽は、鍼灸の根幹をなし、そのバランスをはかることが治療となります。陰陽でいうと女性は陰、男性は陽で、それをうまく利用し、磁石のN極とS極のように、バランスのとれた状態で気の操作を行うことで、より高い治療効果が期待できます。
また、鍼の本数、灸の壮数は、できる限り少ないことを心がけています。
数が多いほどしてもらった気がする、という気もちもわからなくはないですが、それは誤解です。
あまりたくさん打たれ過ぎると、治癒を遅らせるばかりか、ドーゼ・オーバー(刺激量過多)で、逆にしんどくなることさえあります。意識には上らなくても、からだはしっかり刺激を受けとっているのです。最小の刺激で最大の効果を得る、そこが腕の見せどころであり、プライドでもあります。